常設展示室・展示品(その4)
藩主伊東祐相から暑中見舞い

飫肥藩主伊東祐相が、家臣であり師でもある安井息軒に出した暑中見舞状。日付は明治2年6月23日。

翻刻

尺素拜啓酷暑
之節候得共、彌御戬
穀雀湟此御事
存候。時候御障無之樣
御加養有之度所
祈候。隨而小子無恙兼而
洋醫相勸候海水浴、
且長倉玄圭家傳之
灸治等無怠相用候處、
近頃は大に得其效候樣
相覺候閒、御降慮被下度候。
右、暑中御見舞爲可
申述如斯候。頓首。
六月廿三日 伊東從五位
安井息軒先生
梧右
再伸 時下御保護
專一存候 不備

読み下し

尺素
拜啓

酷暑の節候えども、弥々(いよいよ)ご戬穀雀湟 此の御事と存じ候ふ。時候お障(さわ)り之れ無き樣、ご加養之れ有りたく、祈る所に候ふ。隨ひて小子恙無く、かねて洋醫相ひ勸め候ふ海水浴、且つ長倉玄圭家傳の灸治など怠り無く相ひ用ひ候ふところ、近頃は大ひに其の效を得候ふ樣、相ひ覺え候ふあいだ、御降慮下されたく候ふ。
右、暑中御見舞申し述ぶべきばかりと爲し、斯くのごとく候ふ。

頓首。

   六月廿三日 伊東從五位
安井息軒先生

梧右

   再伸 時下御保護專一に存じ候ふ 不備

口語訳

短信(=尺素)
拜啓

酷暑の節ですが、〔息軒先生におかれましては〕いよいよご清勝(戬穀雀湟)の事と存じあげます。時候がらお体にお障り無きよう、ご加養いただきたく、お祈りするところでございます。ところで私めも恙(つつが)無く、かねてより西洋の医者(=洋医)が勧めます海水浴、さらに長倉玄圭家伝の鍼灸など欠かさず行っておりましたところ、近頃は大いにその効能を得ましたように思われますので、〔先生もぜひ〕ご検討いただきたいです。
以上、暑中お見舞いを申し述べようとしたまででございます。頓首。

六月二三日 從五位伊東祐相より
安井息軒先生へ

梧下

  追伸 今の時期は〔健康を〕守ることを第一に、と思います。 不備